なご興

島なご興

 きなりいろのからだに胸当て、後ろ足には突き刺すための凶器。焦げ茶の苔と彼岸花の花弁があたまに生えている。彼は三成を傷つける者に対して警戒している。

基本ステータス

 耐久:B- ケッコージョーブ ナンデスッテ!
 知能:D ミツナリサマ ドウシタラ ゲンキニナッテクレルカ イガイヨユーナイッスモン
 精神:B+(C) イツマデデモマテマス ミツナリサマ
 分裂機能:-- オレ タダヒトリナンデ ソコントコヨロシク
 残骸化:★★★☆☆ ※初期値

【固有スキル】
 どうせこの世は一天地六:彼は常に残骸化するか踏みとどまるかどうかの瀬戸際にいるため、傷害を負った際手持ちの賽を投げて出た目で自分はまだ正常で島左近で島清興であるかどうかを判定する。凶運の持ち主(石田三成)が側にいる限り素寒貧(六のゾロ目)が出ることはないため現状ではただ自分を再確認するための儀式。

 おもうツボ:対象一名の頭上に飛び乗り徐々にその精神を徐々に己と同一化することで意のままに操ることが可能になるいわば取り憑きスキル。ただし攻撃を受けると解除されてしまう。長期間使用することで根付くが本人はあまり使用したくないようだ。

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出現条件

 島清興であったものが島左近となる限り、どこにでも出現するが状況により動向が大きく変わる種。

生態

 賭け事好きは生来のものであるのか、賽子遊びを特に好む傾向がある。特技は身体全体を使って握り飯をつくること。知能の値があまり高くないが、これは馬鹿なのではなく石田三成に対する適切な対処と記憶の入手手段の模索以外に思考を割く余裕がないためである。

 なお残骸化が進むと頭や四肢に彼岸花が咲き始めるので定期的に引っこ抜いて完全焼却処理をすること。放置すると彼岸花の束と籠で形成された塊を頭としてくっつけた、成人男性のものと思しき(あちこちが腐りかけた)死体が大坂城付近を徘徊するようになる。

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物語

 事実上、この個体は島なご興と呼称されるのが正しい。島清興が島左近と名乗りを変える転機になった石田三成との邂逅の記憶を持ち得なかったためである。
 彼の存在の発生は清興と名乗っていた頃に端を発する。自暴自棄になり心も命も何もかも投げ出してしまいたくなる衝動をなんとか事を起こす寸前で押し留めようとする心の防衛機能が形を持った、ようなもの。とうとう抑えきれずに奔りだしてしまった清興をぼんやりと見送りながらきっと自分(行ってしまった清興とここで横たわっている清興)はもうすぐ死んでしまうのだろうと諦めていた、が。意識を失って横たわっているほんのわずかな時間の中で、清興は出会った一人の男に希望を見出しその為に命を賭けることにしたのだと顔を輝かせていた。

 いったいなにが起こったというのか。守ろうと思っていた自分自身に置き去りにされたような気がして、そんな気にさせた「石田三成」が気になって仕方がなくて、しかしその記憶は自分だった島左近だけのものでありそれが自分にもたらされることは決して無い。それは一方的な断絶を突きつけられたようなものだった。

 彼、なご興はそれならばこれまで目を向ける余裕が無かった外の世界へ関心を向けるべきだろうと気持ちを切り替えた。そう、左近の元にいながら切り替えることができた。なぜだか分からないが、自分がぼんやりしている間にあんなに寒々しく暗くおどろおどろしかったかつての住処が光が差す明るく少しだけ温度の感じられる場所になっていた。だからこれは悪いことではない、むしろとても良いことなんだろう。

――そうだ、こんなに嬉しいことはない。左近になった俺は楽しそうに現在(いま)を生きているのだから。光をくれた「三成」という人間に多少の興味はあるけど、きっとその内嫌でも関わることになるだろう、なるだろうから今はこの思いがけず手に入れた人生(よせい)を謳歌するべきなんだ――


 そんな日々に突如暗雲が立ち込めたのは三成の主君が斃され、それを認めることができない三成が錯乱状態に陥り暴走し始めたある分岐室内のこと。左近は三成を止めるため文字通り命を賭けて彼を正気に戻しはしたものの、三成は己の犯した過ちに呆然とし遺体を揺さぶることしかできないでいる。なご興が必死に呼びかけてもその存在を認識できない三成に、なご興は一つの仮説を導き出す。

 自分には左近が見聞きしたものを傍らで見聞きした記憶はあっても、左近となった起源の記憶が無いから自分は三成が知らない島清興という存在のままでいる、過去の存在のままで停止している、島清興はきっとあそこで死んでいなければならないものだった。島左近として生まれ変わりきらなくてはならなかった。断絶なんてものを感じている余裕があったのなら、横たわった死体でいてはならなかった。そのせいで三成は自分を左近に近きものとして認識できないんだと彼は思い込んだ。

 なんとかして、左近が呼び戻そうとした三成(このひと)の心を壊させないようにしたい。無駄なことだとしても、もう本当の死体になった左近はできないから自分が生きている左近として三成の傍にいて守らなくてはならない。生まれ変わらなくてはならない。そうしなければ、賭けた左近の命が無駄になってしまう。 かつての自分だったものが繋いだ一手が失われてしまうのはあまりにも惜しいことだと、「島左近の起源の記憶」を探し求め彷徨うのだった。


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  • 最終更新:2018-12-17 14:46:29

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